ハイパーメディア研究会1月定例会・報告

「レポート2:中川一史」
 [メディアキッズURL http://kids.glocom.ac.jp]

<タイトル>
肩肘張らずに「じゃぶじゃぶ」と!
 〜小学校2年生のネットワーク活用事例報告〜

<所属>
横浜市立中川西小学校

<講演者>
中川一史(なかがわ・ひとし)
1959年北海道苫小牧に生まれ、札幌に育つ。横浜国立大学教育学部卒業後、教職に籍 をおきながら、横浜国立大学大学院(教育学研究科)修了。
横浜国立大学教育学部社会人公開講座(教育実践法)非常勤講師、横浜市視聴覚センタ ー研究員などを歴任。現在、横浜市立中川西小学校教諭。
「子どもが授業でどうコンピュータを活用するか?」という議論の前に「子どもたち がコンピュータと親しくなっていく環境とは?」の問いを大切にしている。
愛車(ランドローバー)を乗り回すのが目下一番の楽しみ。



1.はじめに

 横浜市立中川西小学校2年5組では、プロジェクトが始まってすぐからメディアキッ ズにかかわっている。メディアキッズプロジェクトとは、アップルコンピュータが主 催する教育研究のプロジェクトで、93年の10月からスタートしている。95年の10月か ら第3ステージに入り、全国14校(第1ステージでは8校、第2ステージでは13校)が参加 している。中川西小学校もパソコンクラブや2年5組を中心にこのメディアキッズに仲 間入りしている。
 メディアキッズは、子どもたちが全面に出て、文字はもちろん、デジタルカメラや 写真や音声、動画を交えたメールをやりとりすることで学校間の交流をはじめとした 個人レベルのコミュニケーションを積極的に行っている。
 第2ステージでは、地域の特色を全国へ伝えるデジタル学校新聞を作ったり、じゃ がいも栽培の比較観察をしたり、授業・クラブ活動などでのパソコンと通信の断片的 な利用にとどまらず学校生活のあらゆる場面において、特筆すべき活動が数々報告さ れてきている。
 本稿では、横浜市立中川西小学校の2年生がメディアキッズにどうからんできたか について、事例報告をする。

2.小学校2年生のメディアキッズとの出会い

 当時1年生の子どもたちがメディアキッズと出会ったのは、ひょんなことからだっ た。当初は1年生ということで、キーボード入力などの懸念もあったので、担任とし てはメディアキッズにかかわらせることに慎重だった。しかし、1年5組の教室はパソ コンクラブでも使われていたため、休み時間にパソコンクラブのお兄さんがよくメデ ィアキッズをやりに来ていた。その様子をつぶさに見ていた数人の1年生があれよあ れよという間にメディアキッズに参入してしまった。
 おもしろいことに、はじめのころ5組の子どもたちがメディアキッズで発信をして いた相手は、なんと隣の席の子やグループの友達だった。
 これは考えてみると無理のないことだと考える。入学して半年しかたっていない1 年生の子どもたちにとって、「相手のわからない手紙を書く(不特定多数の相手)」な どという経験は生まれてからなかったのだ。従って、端末から本校のサーバーを経て 、メディアキッズのホストサーバー→本校のサーバー→そして隣の子がメールを読む という、不可思議な現象が起こっていた。 そんな1年生の子どもたちも、次第にメ ディアキッズがどんなものでどんな人が参加をしているか、毎日の経験から少しずつ 把握をしていったようだ。メディアキッズの「いろいろな学校」や「わいわいクラブ 」などの会議室に、日常の様子をデジタルカメラで撮った写真をお絵かきソフトで加 工してアップロードするようになっていった。

3.ザリガニ研究をメディアキッズで行った意味

 春に小学校に隣接する公園で捕れたザリガニの研究がクラスの活動として始まった ときに、「なぜメディアキッズで子どもたちが発信しようとしたか?」について、述 べていきたい。子どもたちの直接のきっかけとしては、「家の図鑑では調べたいこと が載っていない」「クラスで意見がぶつかりあってなかなか結論が出ない」というこ とがあった。また、それと同時に「以前からやりとりをしている北海道の山口のお兄 さん・お姉さんに自分達の関心事(ここではザリガニ)について知ってもらいたい、か かわってほしい」という願いを持っていたことも事実だ。2年生の子どもたちの何人 かは常に遠く離れたお兄さん達に思いをはせていた。
 担任である筆者は、このザリガニの一件でも、子どもたち(実際には子どもたちの 一部)がメディアキッズで発信することについて、いつものようにただ見守っていた 。それには3つの理由があった。
 1つ目は、「子どもたちには子どもたちなりの切実感があった」からである。確か に、クラスで意見がぶつかったといっても、他に解決方法はあるだろう。しかし、そ の1つとしてメディアキッズで親切なお兄さんにSOSを発信するのも1つであろう。し かも、それを子どもたちが自分の意思で選択したのだから。また、「なんとか自分の 思いをわかってほしい」と、それこそ作文学習では見られないような「こだわり」で 文章を吟味していた。
 2つ目は、「子どもたちにはメディアキッズ(「マッキントッシュというパソコンが 」という言い方も成り立つが)が日常の学校生活に根づいていた」からだ。このザリ ガニの活動においても、クラス全員がメディアキッズに向かったわけではない。ある 子どもたちはじっくり「目の前の」ザリガニを研究することに没頭し、ある子どもた ちは家の人や学校内の上級生によく聞いていた。そしてある子どもたちはメディアキ ッズでのやりとりを選択したのだ。これはザリガニのことにかかわらず、いつも見ら れる光景である。つまり、子どもたちにとって、メディアキッズはone of themにす ぎないものであると思われる。別に一斉に「それではメディアキッズで質問を書いて みましょう!」などと、肩に力を入れる必要は何もない。
 3つ目は、「メディアキッズで送られてくるザリガニについての情報はただの無味 乾燥な情報ではない」ということだ。そこには送ってくれた人の温かいぬくもりがあ る。子どもたちもこれまでの経験を通して、それを感じとっているのだ。情報の量か ら言えば、もしかしたら、図書室で調べた方が良いかもしれない。しかし、情報だけ でなく、送ってくれた人の体温が感じられることがメディアキッズというネットワー クを介した活動の醍醐味の1つであると考える。

4.さいごに

 このザリガニ研究には全国の子どもたちや先生(大人)が参加することになる。つま り、ザリガニについての「バーチャルクラスルーム」ができあがった。子どもたちは この(1)バーチャルクラスルーム、(2)学校内の他のクラス・学年の人達、そして(3) クラス内での活動(もちろん、この部分がザリガニの活動としては核になっている)の 間を行き来しながら、時にはどこかで誰かが立ち止まりながら学びを深めていった。
 もちろん、アクセスの時間の保証やキーボード入力など、課題点も残されている。 しかし、子どもたちがイニシャチブを握り、教室(学校)の外に飛び出すことにより、 これまでとはちがった子どもの姿や学習の形態がそこに見えてくるのではないだろうか?


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